時の漂着 (2008)

概要

2008年、オリンパスギャラリー東京・大阪
フィルム及びデジタル、カラー、16×20in. 12×16in. 45点(当サイトでは24点を公開)
発表時サブタイトルとして「板谷峠の鉄道遺構から」を付記

作品について

振り返れば、この作品は私の活動の中では異質な位置にある。特定の撮影対象、ここでは廃線跡・鉄道遺構を何度も取材し、撮りためて作品化するというドキュメンタリー的な制作形式をとっている。

そういう意味では、被写体の性質からみても、アート的な感覚というよりは、自身の仕事として行なっている建築写真に通じる感覚が近いかもしれない。実は当初の意図としては、もう少し違った趣向の作品にするつもりだったのだが、仕上がってみれば記録性の強い作品に着地した。

廃墟や廃線は、私自身の嗜好であることは確かだが、このように興味の対象をストレートに写真化・作品化するという方法について、その後の活動では慎重に考える契機となった。

このように書くと、何やら不満が残っているように聞こえるかもしれないが、そうではなく、私の活動の上でエクリチュールの異なるタイプの作品となった、という認識によるものであり、その点を差し引けば、写真の出来そのものには納得している。

記録性の観点を考慮すると、まだまだ掲載すべき写真があるが、それは今後の課題としたい。

《資料》会場写真

撮影地について

福島山形両県の境界に位置する奥羽本線板谷峠の廃線跡である。明治期以来の廃隧道や廃橋梁が、その姿を山中深くに残している。最寄りの赤岩駅は、撮影当時は営業中(といっても乗降客は皆無に近い)であったが、その後廃止されている。

参考文献

『奥羽本線福島・米沢間概史』進藤義朗(プレス・アイゼンバーン)
『鉄道廃線跡を歩くVIII、X』宮脇俊三 編著(JTBパブリッシング)